2021年12月号 「電子帳簿保存法」の改正およびその対応について
公認会計士 三木 伸介
大手監査法人を経て平成25年に株式会社日本経営に入社し、医療・介護分野におけるコンサルティング業務に従事。その後、税理士法人日本経営に転籍し、医療法人等の税務業務に従事。平成29年に御堂筋監査法人に入所し、主に医療法人・社会福祉法人の監査業務を担当。
いよいよ2022年1月に改正 電子帳簿保存法が施行されます。この改正について、現状、電子帳簿保存法に対応している、または今後対応していきたい法人だけが対象と思われているケースが散見されますが、今回の改正は、電子帳簿保存法に対応しているか否かに関わらず、電子取引をしているすべての法人が改正の影響を受けることになります。以下では、翌月の施行に向けて、様々な企業や医療法人・社会福祉法人にも影響を与える電子取引に関する改正およびその対応を中心に説明していきます。
1.主な改正内容
規制が緩和された主なものについては、記録項目として「取引年月日、取引金額、取引先」が検索項目に設定されていれば、検索要件を満たすものとなりました。また、基準期間の売上が1,000万円以下の小規模法人等については、一定の要件のもと検索要件が不要とされました。タイムスタンプについては、タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とするものに緩和されました。
一方、規制が強化されたものについては、重加算税が10%加重される措置が整備されたことや、現行では電子取引に関する契約書や請求書等の電子データを紙出力した書面で保存すれば足りるとされていたものが、令和4年1月1日以降は認められなくなりました。このため、「電子取引」に付随して授受した請求書・領収書・納品書などの取引情報は、必ず電子保存することが必要となります。 ここでいう電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいますが、具体的には以下のものになります。
また、電子取引に該当する取引情報とは、以下となります。
このため、Amazonなどのインターネットで物品を購入し、請求書や領収書等をダウンロードする場合などは、電子データでの保存義務が発生することになります。また、電子メールで請求書や領収書等のPDFファイル等を受領した場合に、電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メール自体を保存する必要がありますが、本文に記載がなく添付ファイルに取引情報が記載されている場合は当該添付ファイルのみを保存しておけばよいことになります(Q&A 問3・5)。
2.対応が必要となる要件・対応例
今回の改正は、電子取引を行うすべての法人が対象となっていることから、電子取引を行う法人は検索要件や保存要件を満たした対応を行うことが必要となります。各要件および対応例について以下まとめましたのでご参照ください。
3.対応未了の場合の取扱
令和3年11月に「お問合せの多いご質問」が国税庁より公表されました。以前公表されたQ&Aでは電子取引の電子データの一部を保存せずに書面で保存していた場合について、「特段の事情がなく、保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得る」とありましたが、今回の回答では、「保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません」と追記されています(補4より)。このため、保存していなくても直ちに青色申告の承認が取消されることはありませんが、法改正に伴い電子取引にかかる電子データの保存が必要であることには変わりがないため、早期に対応することが望まれます。
【2021年12月12日追記】
2022年度(令和4年度)税制改正大綱に、改正電子帳簿保存法の猶予が盛り込まれました。
改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行されますが、メールなどの電子取引によって受け取った国税関係書類の電子保存の義務化は2年の猶予期間が設けられ、2022年1月1日から2023年12月31日までの間は、紙による印刷保存の対応が可能となりました。